『わたしを離さないで』とカズオ・イシグロのインタビュー
『わたしを離さないで』という去年評判になった小説があります。当時この小説はカズオ・イシグロの最高傑作という人もいたほどで、ブログの書評でもおおむね好評でした。ところが、もちろん人の感性はそれぞれですから、この小説をあまり評価しない人もいたわけです。僕にとってこの小説はここ数年読んだ小説のなかでもベスト5に入るものだったので、え?何で?と 首をかしげたものです。
その批判的な意見の中に、「何で主人公達は反抗したり逃亡したりしないの?」と、考えもしなかったけど言われてみればっともかも、と思ってしまったものもありました。確かに人によっては登場人物があまりに簡単に運命を受け入れているように見えて不自然に感じるだろう な、と。僕がそういう感想を持たなかった理由はというと、カズオ・イシグロの他の作品の傾向から自然にそう思い込んでいたからです。うまく説明できないのですが、今まで読んだ彼の小説には消極的な雰囲気がありました。まあそういった雰囲気は作者の世界を見る視点からきているのかなあ、と思っていました。
カズオ・イシグロの小説を読んだことがある人には、このインタビューはきっと面白いと思います。
カズオ・イシグロ/Kazuo Ishiguro 『わたしを離さないで』 そして村上春樹のこと
ここまで作品の内幕について作者本人から聞けるのはちょっと反則のような気もしますが、僕が気になっていたことを全部作者が話してくれていました。特に印象に残った箇所を転載します。
私が昔から興味をそそられるのは、人間が自分たちに与えられた運命をどれほど受け入れてしまうか、ということです。こういう極端なケースを例に挙げました が、歴史をみても、いろいろな国の市民はずっとありとあらゆることを受け入れてきたのです。自分や家族に対する、ぞっとするような艱難辛苦を受け入れてき ました。なぜなら、そうした方がもっと大きな意義にかなうだろうと思っているからです。そのような極端な状況にいなくても、人はどれほど自分のことにつ い.て消極的か、そういうことに私は興味をそそられます。自分の仕事、地位を人は受け入れているのです。そこから脱出しようとしません。実際のところ、自 分たちの小さな仕事をうまくやり遂げたり、小さな役割を非常にうまく果たしたりすることで、尊厳を得ようとします。時にはこれはとても悲しく、悲劇的にな ることがあります。時にはそれが、テロリズムや勇気の源になることがありますが、私にとっては、その世界観の方がはるかに興味をそそります。
…我々は大きな視点を持って、常に反乱し、現状から脱出する勇気を持った状態で生きていません。私の世界観は、 人はたとえ苦痛であったり、悲惨であったり、あるいは自由でなくても、小さな狭い運命の中に生まれてきて、それを受け入れるというものです。みんな奮闘 し、頑張り、夢や希望をこの小さくて狭いところに、絞り込もうとするのです。そういうことが、システムを破壊して反乱する人よりも、私の興味をずっとそそってきました。
作者の語る世界観は消極的というよりも、冷徹という言葉が合っていると思いました。凄みがあります。
posted with amazlet on 08.01.21
カズオ イシグロ
早川書房 (2006/04/22)
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おすすめ度の平均: 
クイーンの「リヴ・フォーエヴァー」の歌詞を思い出した。
警告のような告発のような
人生について考えたとき読んでほしい本です




